大村さんの工房は、金閣寺から約2kmの原谷にあります。バスの本数が少なく、公共交通を使って訪問するには不便ですが、タクシーを利用するなら金閣寺や龍安寺、仁和寺にほど近く観光に便利な場所にあります。
なぜ、原谷か? ということを調べたところ、とても興味深い歴史があることを知りました。原谷は古くから開墾が試みられたようですが、酸度が強く重粘土の土壌であることから、作物を育てるのに向かなかったようです。それが戦後になって、帰還兵の受け入れ政策の一環として農耕や畜産用地に指定され、本格的に開拓されました。60年代に入ると住宅地利用が進められ、70年代には西陣から多くの工場が移転してきたそうです。70年代は着物ブームの全盛期で、事業規模を拡大する工房は少なくなかったであろうと想像します。そんな中、地価の高い市街地ではなく、広々とした工房を構えることのできる原谷を選ぶ流れがあったのだそうです。反物の長辺は13mです。それを広げて作業することのできる広さと、複数の職人を雇って作業できる広さが必要だったのです。
大村さんの工房では、着物の製造工程のほぼすべてを見学できます。通常、着物はひとつの工程にそれぞれ専門の職人さんがいて、おおよそ10工程を経て仕上がります――これこそが、職人の分業という仕組みそのものです。しかし、製造プロセス全体を理解したい訪問者にとって、ある工程と次の工程を結びつけるのに言葉や画像だけの説明では物足りないことがあります。一方、大村さんは作家なのでデザインから最終工程までひとりで行っていて、その工程をすべて隠すことなく見せてくれます。

ろうけつ染め、吹雪染め…
先代から受け継いだ、希少な技術

大村さんは、蝋を使った着物のデザインを得意としています。今ではこの「ろうけつ染め」という技法を使う職人や作家の数は限られていますが、訪れたお客さまには体験していただけるとても貴重な内容となっています。